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【ぽえ犬と詩人は歩きながら考える 3】 ことばは人生の認識であり、その深さが人生の明かりとなるから ●ぽえ犬と詩人が歩いてきた道 視覚障害者施設「ライトハウス」(鶴見区)で、4人の中途失明者たちと始まったワークショプ。 「贈る言葉」の歌詞を朗読する。静まりかえった館内にやわらかな波がひろがった。● 事故で視力を失った3人の若者は、はじめて聴いた朗読に驚きながらも「ちょっと泣きそう」とか「(胸に)来るなー」と、素直な感想を口にした。実のところ、これほどまで集中力の高い観客ははじめてである。 けれど、糖尿病で失明した30代のヌマさんは、まだ顔が床に向いていた。こころが床に落ちたまま。 いつのまにやら裸足になった飯島がギターを手にすると「よっしゃ、いっぺんみんなで歌おうか」と呼びかける。弦を鳴らすと、わたしたちは「せえの」で歌いだす。元気いっぱいの合唱、といった感じ。歌い終わって、わたしは困ったな、と思う。あの集中力とともにあった、彼らのこころはどこへ行ったのだろう。 「いちど朗読してみない?」と投げかけ、飯島がおもちゃの楽器を手渡す。ユウキにはアフリカンパーカッション、テッチャンには和太鼓、ヌマさんにはウッドブロック。タダッチにはギターを。職員の井野さんは洗濯板、スタッフの門田はマラカス。てんでに鳴らしはじめて、賑やかなお祭り騒ぎになってしまう。 そこで、飯島は「今日の雨のような音をだそうよ」と、やさしくギターの弦を押さえた。後に聞いたのだが、この時、心臓のビートを刻みながら、コードを弾いたそうである。 いつのまにか、誰がはじめたのか、ハミングがはじまる。ちいさな雨粒が窓をつたうような。「あなたのことばの『贈る言葉』を朗読してみて」と言うと、事前に申し合わせをしていたわけでもないのに、門田は励ますような低音のハミングを響かせ、井野さんは閃いたことばを口にする。飯島のギターは、風にそよぐ木々の心音のよう。 ゆっくりと、あの集中力が戻ってきた。雨の音は、遠くなり近くなり、わたしたちを包みはじめた。 手を膝に置いたテッチャンが、声をだした。 「暮れなずむ町の光と影の中。」 応じて、わたしたちはことばをみつけていく。 「光、光。」「ひかり。」「影。」「かげ。」「ひかり。」 彼らが人生の途中で突然に失ったもの。 雨に濡れて、立ち尽くしていた。 ことばはつづく。「ひかり」「日曜日のひだまり」。誰が呟いたか「朝の陽のひかり」。 木霊のようなハミングに、ことばが鳥のように羽ばたく。 今度の朗読はタダッチ。木訥とした語り口で思い出をさぐる。ユウキが茶々を入れるが、タダッチはそれに動じない。「ゆうぐれの町の」。誰かが後をひきつぐ「ゆうがたのかえりみち」。 「ひとりぼっちのかえりみち」と呟いたのはテッチャン。 飯島が「ひとり」と、ことばを返してしまう。 禁句にも近いそのことばの声に、わたしは目を閉じる。呼吸を深くし、平衡を保つ。祈りのような気持ち。 ことばの鳥は、そこで、おおきく羽を動かし、空気を揺らした。 すると、それまで全く落ち着きがなかったユウキが言った。「ひとりぼっちはいやだ」。 格好つけることが自慢の彼。口にだせなかったことばが、てのひらに乗ってさしだされた。 彼らの孤独が、正確にいうと、その場にいるわたしたちの孤独が、はだかになって、ただ雨に濡れる。 わたしは、それでよいのだと思う。 ひとりじゃないよ、なんて答えない。 孤独のことばが、こころを羽ばたかせ、人を今日の扉の前に立せるから。 ユウキは、それから両のてのひらいっぱいのことばを口にした。 雨のなか、ひとり歩いていく青年の背中のちいさな羽に、雨は降りつづける。 ●上田假奈代出動情報● ■ 第1回全日本朗読シンポジウム 9/14(日) 18:00〜 \2000(1drink) ポエトリーリーディングを多角的に検証 出演:上田假奈代 大谷燠 ほか at ココルーム http://www.kanayo-net.com/cocoroom 大阪市浪速区恵美須東3-4-36 フェスティバルゲート4F tel.06-6636-1662 ■ ぽえ茶会vol.8「上田假奈代の資本論2」 9/19(金) 20:00〜\1500(1drink) ■ ぽえ茶会vol.9「上田假奈代の蜻蛉日記」 10/24(金) 20:00〜 \1500(1drink) at ココルーム ■ 詩の学校 9/3・17 *10/1・15 すべて水曜 19:30〜 \1000 以降もつづきます at 應典院 http://www.outenin.com 大阪市天王寺区下寺町1-1-27 tel.06-6771-7641 ■ 詩の放課後 9/4・18 *10/2・16 すべて木曜 19:00〜 \1000 以降もつづきます at 芸術センター http://www.kac.or.jp 京都市中京区室町通鮹薬師下る山伏山町546-2 tel.075-213-1000(代) ■ 親と子@詩のワークショップ「声とことばで歩く」 10/4〜11/15 第1・3土曜日 10:00〜12:00 全4回 定員:親子15組 対象:小学3年〜6年生の子どもと大人のペア 受講料:\4500 応募締切:9/11(木)当日消印有効 クレオ大阪東「講座」係 〒536-0014 大阪市城東区鴫野西2-1-21 tel.06-6965-1200 fax.06-6965-1500 「ぽえ犬と詩人は歩きながら考える」は、詩人が社会とどう関ることができるか、を挑戦していくレポートです。放出・視覚障害者施設ライトハウスでの「声とことばのワークショップ」は、月に2回(土曜日)に開いています。詳細はお問合せください。 info@kanayo-net.com tel&fax 06-6636-1662 ココルーム(上田) ------------------------------------------------------------------------ 上田假奈代 (うえだかなよ) 闘う詩人・詩業家 3歳から詩作をはじめ、詩を軸にした活動を展開 00年から「トイレ連込み朗読プロジェクト」開始 02年から各地で、詩のワークショップ「詩の学校」を開く 動物園前フェスティバルゲート4F・詩のカフェルーム 「cocoroom」代表 http://www.kanayo-net.com |
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