→▼ M E N U

スペシャルレポート

最新号
2004/1〜2
2003/11〜12
2003/9〜10
2003/7〜8
2003/5〜6
2003/3〜4
2003/1〜2
2002/11〜12
2002/9〜10
2002/7〜8
2002/5〜6
2002/3〜4
2002/1〜2
2001/11〜12
2001/9〜10
2001/7〜8
2001/5〜6


【ぽえ犬と詩人は歩きながら考える 3】

ことばは人生の認識であり、その深さが人生の明かりとなるから

 
●ぽえ犬と詩人が歩いてきた道
視覚障害者施設「ライトハウス」(鶴見区)で、4人の中途失明者たちと始まったワークショプ。
「贈る言葉」の歌詞を朗読する。静まりかえった館内にやわらかな波がひろがった。●
 
事故で視力を失った3人の若者は、はじめて聴いた朗読に驚きながらも「ちょっと泣きそう」とか「(胸に)来るなー」と、素直な感想を口にした。実のところ、これほどまで集中力の高い観客ははじめてである。
けれど、糖尿病で失明した30代のヌマさんは、まだ顔が床に向いていた。こころが床に落ちたまま。
 
いつのまにやら裸足になった飯島がギターを手にすると「よっしゃ、いっぺんみんなで歌おうか」と呼びかける。弦を鳴らすと、わたしたちは「せえの」で歌いだす。元気いっぱいの合唱、といった感じ。歌い終わって、わたしは困ったな、と思う。あの集中力とともにあった、彼らのこころはどこへ行ったのだろう。
 
「いちど朗読してみない?」と投げかけ、飯島がおもちゃの楽器を手渡す。ユウキにはアフリカンパーカッション、テッチャンには和太鼓、ヌマさんにはウッドブロック。タダッチにはギターを。職員の井野さんは洗濯板、スタッフの門田はマラカス。てんでに鳴らしはじめて、賑やかなお祭り騒ぎになってしまう。
そこで、飯島は「今日の雨のような音をだそうよ」と、やさしくギターの弦を押さえた。後に聞いたのだが、この時、心臓のビートを刻みながら、コードを弾いたそうである。
 
いつのまにか、誰がはじめたのか、ハミングがはじまる。ちいさな雨粒が窓をつたうような。「あなたのことばの『贈る言葉』を朗読してみて」と言うと、事前に申し合わせをしていたわけでもないのに、門田は励ますような低音のハミングを響かせ、井野さんは閃いたことばを口にする。飯島のギターは、風にそよぐ木々の心音のよう。
ゆっくりと、あの集中力が戻ってきた。雨の音は、遠くなり近くなり、わたしたちを包みはじめた。
 
手を膝に置いたテッチャンが、声をだした。
「暮れなずむ町の光と影の中。」
応じて、わたしたちはことばをみつけていく。
「光、光。」「ひかり。」「影。」「かげ。」「ひかり。」
彼らが人生の途中で突然に失ったもの。
雨に濡れて、立ち尽くしていた。
 
ことばはつづく。「ひかり」「日曜日のひだまり」。誰が呟いたか「朝の陽のひかり」。
木霊のようなハミングに、ことばが鳥のように羽ばたく。
 
今度の朗読はタダッチ。木訥とした語り口で思い出をさぐる。ユウキが茶々を入れるが、タダッチはそれに動じない。「ゆうぐれの町の」。誰かが後をひきつぐ「ゆうがたのかえりみち」。
「ひとりぼっちのかえりみち」と呟いたのはテッチャン。
飯島が「ひとり」と、ことばを返してしまう。
禁句にも近いそのことばの声に、わたしは目を閉じる。呼吸を深くし、平衡を保つ。祈りのような気持ち。
ことばの鳥は、そこで、おおきく羽を動かし、空気を揺らした。
 
すると、それまで全く落ち着きがなかったユウキが言った。「ひとりぼっちはいやだ」。
格好つけることが自慢の彼。口にだせなかったことばが、てのひらに乗ってさしだされた。
彼らの孤独が、正確にいうと、その場にいるわたしたちの孤独が、はだかになって、ただ雨に濡れる。
わたしは、それでよいのだと思う。
ひとりじゃないよ、なんて答えない。
孤独のことばが、こころを羽ばたかせ、人を今日の扉の前に立せるから。
 
ユウキは、それから両のてのひらいっぱいのことばを口にした。
雨のなか、ひとり歩いていく青年の背中のちいさな羽に、雨は降りつづける。
 

●上田假奈代出動情報●
■ 第1回全日本朗読シンポジウム
9/14(日) 18:00〜 \2000(1drink)
ポエトリーリーディングを多角的に検証
出演:上田假奈代 大谷燠 ほか
at ココルーム
http://www.kanayo-net.com/cocoroom
大阪市浪速区恵美須東3-4-36
フェスティバルゲート4F tel.06-6636-1662
■ ぽえ茶会vol.8「上田假奈代の資本論2」
9/19(金) 20:00〜\1500(1drink)
■ ぽえ茶会vol.9「上田假奈代の蜻蛉日記」
10/24(金) 20:00〜 \1500(1drink)
at ココルーム
■ 詩の学校
9/3・17 *10/1・15
すべて水曜 19:30〜 \1000 以降もつづきます
at 應典院 http://www.outenin.com
大阪市天王寺区下寺町1-1-27 tel.06-6771-7641
■ 詩の放課後
9/4・18 *10/2・16
すべて木曜 19:00〜 \1000 以降もつづきます
at 芸術センター http://www.kac.or.jp
京都市中京区室町通鮹薬師下る山伏山町546-2
tel.075-213-1000(代)
■ 親と子@詩のワークショップ「声とことばで歩く」
10/4〜11/15 第1・3土曜日
10:00〜12:00 全4回
定員:親子15組
対象:小学3年〜6年生の子どもと大人のペア
受講料:\4500
応募締切:9/11(木)当日消印有効
クレオ大阪東「講座」係
〒536-0014 大阪市城東区鴫野西2-1-21
tel.06-6965-1200 fax.06-6965-1500

 
「ぽえ犬と詩人は歩きながら考える」は、詩人が社会とどう関ることができるか、を挑戦していくレポートです。放出・視覚障害者施設ライトハウスでの「声とことばのワークショップ」は、月に2回(土曜日)に開いています。詳細はお問合せください。
info@kanayo-net.com
tel&fax 06-6636-1662 ココルーム(上田)
 

------------------------------------------------------------------------


上田假奈代 (うえだかなよ)
闘う詩人・詩業家
3歳から詩作をはじめ、詩を軸にした活動を展開
00年から「トイレ連込み朗読プロジェクト」開始
02年から各地で、詩のワークショップ「詩の学校」を開く
動物園前フェスティバルゲート4F・詩のカフェルーム
「cocoroom」代表
 http://www.kanayo-net.com

************************************************
<このページはC/P カルチャーポケットに掲載されたものを転載しています>
kanayo-netはリンクフリーです。相互リンクご希望の方はメールくださいませ。

メール山羊 : info@kanayo-net.com
(C)1992-2003 Copyright Kanayo Ueda All rights Reserved.