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【ぽえ犬と詩人は歩きながら考える 4】

そのために、勇気が要る

●ぽえ犬と詩人が歩いてきた道
視覚障害者施設「ライトハウス」(鶴見区)で、4人の中途失明者たちと始まった『贈る言葉』ワークショプ。なかなか素直になれない彼らが歌詞の朗読に挑戦。「ひとりぼっちはいやだ」と呟いた青年ユウキは、雨の音に耳を澄ます。●
 
雨が降りつづいている。体育館のなかは、その雨より静かな声の雫。やわらかくこころの窓をつたう。事故で視力を失った3人の若者は、それぞれの孤独を浮かびあがらせ、穏やかな表情である。けれど、糖尿病で失明した30代のヌマさんの表情に変化はない。首を90度に傾け、床を向いたまま。

彼の傍らに行くと、そっとかがんだ。
肩に手をおいて「声、だせるかな」と、ちいさな声で尋ねる。
すべてを閉ざした背中は硬く、返事はない。
しずかな呼吸をつづける。
3人の若者たちのハミングは、細かな粒子となって館内を巡り、飯島のギターの音は季節の終わりを告げる夕暮れのよう。
 「だいじょうぶよ。つづけてみて」と、わたしは『贈る言葉』の歌詞をゆっくりと口にする。
彼の頭が揺れて、それは何度も繰りかえされ、時間の感覚がなくなるほど、集中力が波打つ。そして、彼は口をかすかに開け「暮れなじむ街の」と発語した。

鳥が濡れそぼる羽を動かしはじめる。
焦らず、ゆっくりと。
いつも、飛ぶまでが困難だから。
勇気はそのために要る。

彼のちいさな声は、夕暮れのなかを歩き出す。歩きやすい速度になるようわたしの声は白杖のように地面の先を行く。追いかけるように彼は声をあげる。かぼそいけれど、ふたつの声はハミングの雨の和音に重なる。朗読をつづける彼の、うつむいていた頭がだんだんとあがる。最後まで朗読しおえた時、彼の顔は正面を向いていた。

ユウキが声をだして笑い出した。
みんなが手をたたいて、微笑んでいた。

それが、彼らとの出逢いの1日目となった。
声の光がさしこむ雨上がりのなかを、わたしは次の仕事へ向かう。

翌日、職員の井野さんから連絡が入った。ユウキたちから「あの人たちは一体何者なん?彼らは何をしたんか?」「俺らがしたいことはあれやない」「みんな一体になってるから、ちゃんとやりたい」と、話があったとのこと。彼らも、あの時間をどう処理してよいのか戸惑っている様子である。
「ヌマさん、てっちゃんの廊下を歩く姿勢がきれいになってる、ヌマさんが肩の痛みを看護婦に話し、リハビリをはじめ、歩行の自習に取り組みはじめた」との報告もうける。

それから、4回のワークショップを重ね、彼らは本番の日を迎えた。あいにく、その日のわたしは別の場所で詩のワークショップをしていたため立ち会えなかったのだが、参加した飯島からさっそく、電話がかかってきた。緊張していた4人だったが、立派に『贈る言葉』を語り、歌ったそうだ。そして、礼をした後に、ヌマさんがマイクをつかみ、こう言ったというのだ。「僕たちは障害者です。でも、みなさん、目がみえないからって、こころを閉じないでください」と。



●上田假奈代出動情報●



江坂音楽フェスティバル
アートイベント『BACK TO HOME』
10/26(日)10:00〜20:00 無料
江坂東急ハンズ前 エスコタウン・クロ−ド通り
info. ボムグラフィックス『BACK TO HOME』事務局
06-6562-7510

■ぽえ茶会vol.10「まっくらナイト」
出演:上田假奈代 / 丘田イージマン
11/14(金)20:00 ¥1500(1drink)

■ぽえ茶会vol.11「個人事業のはじめ方」
出演:上田假奈代 / プディング斎
12/12(金)20:00 ¥1500(1drink)

■詩の学校
11/5・19*12/3・17 すべて水曜日
19:30 ¥1000
應典院 大阪市天王寺区下寺町1-1-27
tel. 06-6771-7641

■詩の放課後
11/6・20*12/4・18 すべて木曜日
19:00 ¥1000
京都芸術センター http://www.kac.or.jp
京都市中京区室町通鮹薬師下る山伏山町546-2
info. 京都芸術センター 075-213-1000

■親と子@詩のワークショップ「声とことばで歩く」
11/1・15 すべて土曜日
10:00 ¥4500(全4回)
クレオ大阪東 536-0014 大阪市城東区鴫野西 2-1-21
info. クレオ大阪東 06-6965-1200

■声とことばのワークショップ
11/8・22*12/13 すべて土曜日
14:00(予定) 無料
講師:上田假奈代 / 飯島秀司
視覚障害者リハビリセンターライトハウス
大阪市鶴見区今津中2-4-37

■上田假奈代・生誕三十四周年記念祭
出張トイレ連れ込み朗読プロジェクト「あ」
〜あなたとあたしの耳が近づく〜
12/1(月)
場所:ご指定地 料金:¥20000

※遠方の場合は別途にて交通費を申し受けます
定員:限定5名


*問合せがないものは、すべてcocoroom
大阪市浪速区恵美須東3-4-36
フェスティバルゲート4F
tel.+fax. 06-6636-1662 / tel. 06-6636-1612
info@kanayo-net.com

 

「ぽえ犬と詩人は歩きながら考える」は、詩人が社会とどう関ることができるか、を挑戦していくレポートです。放出・視覚障害者施設ライトハウスでの「声とことばのワークショップ」は、月に2回(土曜日)に開いています。詳細はお問合せください。
info@kanayo-net.com
tel&fax 06-6636-1662 ココルーム(上田)

 

上田假奈代 (うえだかなよ)
闘う詩人・詩業家
3歳から詩作をはじめ、詩を軸にした活動を展開
00年から「トイレ連込み朗読プロジェクト」開始
02年から各地で、詩のワークショップ「詩の学校」を開く
動物園前フェスティバルゲート4F・詩のカフェルーム
「cocoroom」代表
 http://www.kanayo-net.com

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<このページはC/P カルチャーポケットに掲載されたものを転載しています>
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