→▼ M E N U

スペシャルレポート

最新号
2004/1〜2
2003/11〜12
2003/9〜10
2003/7〜8
2003/5〜6
2003/3〜4
2003/1〜2
2002/11〜12
2002/9〜10
2002/7〜8
2002/5〜6
2002/3〜4
2002/1〜2
2001/11〜12
2001/9〜10
2001/7〜8
2001/5〜6


【ぽえ犬と詩人は歩きながら考える 5】

絶対、あきらめない

●ぽえ犬と詩人が歩いてきた道
視覚障害者施設「ライトハウス」(鶴見区)で、4人の中途失明者と行った『贈る言葉』ワークショプを経て、彼らはこころを開き、贈ることばを声にした。そして再び、彼ら自身の卒業式のための稽古の申し入れがあった。●
 
「自分で電話しなさいよ」職員の井野さんは言ったそうだ。
ユウキとタダッチ、てっちゃんが、3人の卒業発表にむけて、わたしたちに稽古をつけてほしい、という要望を受け取った飯島は、彼らの依存を感じて、返事を保留にした。彼らは北海道や広島のそれぞれの地元に帰る。おそらくもう二度とわたしたちは出逢わないだろう。わたしは引き受ける、と即答した。

そして、3回の稽古日を設けた。
稽古の初日、体育館に到着すると、既に彼らはMDレコーダーを鳴らしながら、壁に向かい、歌う稽古を始めている。そのやる気は、どこか空元気のように見受けられた。
「さあ、はじめようや」挨拶をすませ、彼らが選んだ曲「翼をください」と「贈る言葉」を練習する。
大きな声だ。だからいいとは限らない。荒すぎる。わたしはかぶりをふった。朗読の稽古も同様。落ち着きがない。飯島が「それじゃ、気持ちは伝わらんよ。俺はそんなん聞きたくもない。もっと丁寧に」と真剣な声で言う。
2日目の稽古は彼らの都合によりキャンセル。
稽古最終日。初日と同じように声は大きいが、上滑り。終了まであと少しとなって、わたしは早めに練習を終えた。円になって椅子に座っている彼らに向かって、沈黙する。彼らも黙っている。ゆっくりと息を吐き、わたしは一言「話してみて」と言った。
すると、いっせいに3人は喋り出す。将来の不安を「分かってるんやけど」と繰りかえしながら。
彼らはこれから、視覚障害者として生きるために、盲学校や鍼灸師の学校へ進路を希望していた。数日後に合格発表を控えた受験生の身は、気ばかり焦せる。一緒に暮らす家族と関係を保てない中途失明者も多いと聞いたことを思いだす。3人の胸中は期待よりも不安の方が大きい。「こんな気持ちで発表できるんやろうか」と洩らす声は、弱々しい。
「やろうと決めたことを、自分でひきうけていくこと。言い訳するよりもさきに、顔をあげて、一生懸命に立つこと、ね」
彼らは、深く何度も頷き「失敗しても、それが勉強やね」と、拳を握った。

一週間がたち本番の日、木々の芽は膨らみ早い春を告げていた。彼らをみつけたわたしは手をとると「おめでとう」を言う。慣れないスーツを着た3人は照れくさそうに笑う。けれど、ユウキの様子がおかしい。落ち着きがなく、隙間なく喋りつづけている。脇からタダッチがユウキの不合格をこっそり教えてくれた。
お喋りを弾丸のように浴びていると、見知らぬ職員に呼びとめられ、彼らを刺激するから接触しないように、と忠告された。わたしは会場の端の席に座らされる。3月の陽射しはブラインドの影を濃くしている。
ユウキとてっちゃんは、式が進行する間もずっとお喋りをつづける。彼らの会話の隙間に入れるタイミングを待ち、そっと彼の手をとり、「あんたの名前はユウキやろ。ほんまの勇気はあきらめへんことや」と小さな声で告げる。彼の身体がハッと揺れた。

そして、彼らの発表になり、3人は立ち上がった。前奏がはじまり、高らかに歌いあげると、順に語りはじめる。ユウキの番がきた。とつとつと感謝を述べると、こう締めくくった。「自分の人生やから、どうなるかわからへん人生でも、絶対あきらめたくない。」
彼らは、それぞれの道を歩き始めた。その道中でまた迷うかもしれない。けれど「絶対あきらめない」と言ったそのことばが彼らのこころの中で、ちいさな種子になり、芽がふくことを信じる。
今年春から、同じ体育館で『声とことばのワークショプ』は始まり、月に2回、土曜日の昼下がりにわたしたちはライトハウスへ向かう。
 


*上田假奈代出動情報*


●【 こんにちは cocoroom 】

○「戦場写真」1/3(土)〜17(土)
12:00〜22:00 無料(10日、11日除く)
写真:牧田清 ことば:上田假奈代

○「あなたの上にも同じ空が」LIVE
1/10(土)・11(日) 19:00
2500(2800) 1d別
出演:上田假奈代 with 三★電気、詩のオーケストラ、GAS(1/10)、川崎知&海老原幹生(1/11)

○イリュージョン
いいむろなおき×上田假奈代
2/2(月)・3(火) 20:00
2000(2300) 1d付

○ことばのぬりえ展
2/4(水)〜15(日) 12:00〜22:00 無料

○ことばのぬりえ合評会
2/15(日) 15:00 300 1d別

●ぽえ茶会 [生きる仕事シリーズ] / 対談 上田假奈代

○vol.12 「蓮岡修:アフガン井戸掘りコーディネーター」
1/23(金)

○vol.13「百々徹:神戸ファッション美術館学芸員」
2/13(金)
すべて OPEN19:00 START20:00
1300(1500) 中高生1000 1d別

●T.E.E. No.6
1/18(日) OPEN18:00 START19:00 無料+1d別
出演:nova express(アンビエント音響と映像)+
上田暇奈代(詩人)+黒子さなえ(ダンス)、他

●第2回 全日本★朗読シンポジウム
2/28(土) 18:00 1500 1d別
出演:山下残(ダンサー)、佐相憲一(詩人)、上田假奈代
*上記すべての会場 COCOROOM

●詩の学校
1/7・21 2/4・18 すべて水曜
19:30 1000
講師:上田假奈代
会場:應典院 大阪市天王寺区下寺町1-1-27
tel. 06-6771-7641

*すべてのお問合せ
COCOROOM
大阪市浪速区恵美須東3-4-36フェスティバルゲート4F
tel&fax. 06-6636-1662 tel. 06-6636-1612
info@kanayo-net.com

 

「ぽえ犬と詩人は歩きながら考える」は、詩人が社会とどう関わることができるか、を挑戦していくレポートです。
放出・視覚障害者施設ライトハウスでの「声とことばのワークショップ」の模様をお伝えします。
ワークショップは月に2回 (土曜日) 開催。
詳細はCOCOROOMまで、お問合せください。

 

上田假奈代 (うえだかなよ)
闘う詩人・詩業家
3歳から詩作をはじめ、詩を軸にした活動を展開
00年から「トイレ連込み朗読プロジェクト」開始
02年から各地で、詩のワークショップ「詩の学校」を開く
動物園前フェスティバルゲート4F・詩のカフェルーム
「cocoroom」代表
 http://www.kanayo-net.com

************************************************
<このページはC/P カルチャーポケットに掲載されたものを転載しています>
kanayo-netはリンクフリーです。相互リンクご希望の方はメールくださいませ。

メール山羊 : info@kanayo-net.com
(C)1992-2003 Copyright Kanayo Ueda All rights Reserved.