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【ぽえ犬と詩人は歩きながら考える 6】

話すことのはじまりは、こころを聞くこと

●ぽえ犬と詩人が歩いてきた道
視覚障害者施設「ライトハウス」(鶴見区) で行った4人の中途失明者たちとの「贈る言葉ワークショプ」は7回で終了、春のなかへそれぞれの一歩を踏み出した。彼らの残した要望が通り、同施設で「こえとことばのワークショップ」が始まった。●
 
体育館のなか、高い窓からさしこんだ光が円形に並べられた椅子をあたためている。職員の井野さんが手をそえて参加者を連れてきてくれる。「手引き」ということばを覚えたのもこの頃だ。歩く時は腕をまっすぐにしていれば、彼らはわたしの肘のうえあたりにやわらかく手をおく。すこし歩幅を小さく歩いて、手引きするのである。
椅子の背もたれに、その人の手を重ねる。ゆっくりとまわりこんで、その人は腰を椅子にあずける。ワークがはじまるまで談笑していることもあれば、おだやかな湖のような沈黙につつまれることもある。
 
挨拶をすると、ストレッチなどして体をほぐす。飯島が歩きながらギターをつまびき、わたしは持参した詩集から数編の詩を朗読する。彼らの集中力にはいつもハッとさせられ、話すことのはじまりは聞くことだと彼らから教わった。ふかくこころの耳を澄ましながら声をだす。
休憩をはさみ、わたしはひとつの話題をなげかける。「〜〜について話してください」。〜〜は「階段について」、「窓について」など。一人ずつ順に話をして、そのあと全員でハミングする。全員の声が空気にとけ込み、体育館内を満たしてゆく。おだやかな時間。わたしは口をひらき、それまで語られた話をもとに即興の朗読をする。話してくれた人の後ろに立ち、思い出を声にしていくとき、断片のイメージがぱたぱたと頁を繰るように広がっていく。円形に詩情はあふれだし、この場は作品として結晶する。即興詩がおわり、ハミングとギターの音がちいさくなる。貝殻や珊瑚を連れて波がひくように。梢の風が季節をめくるように。
この時間が作品なのだと気づいてから、音源として残すようにした。
 
「今日は〜〜について話してください」と言うと、場内は円座に一瞬どよめくが、めいめいに記憶をたどりはじめる。ほとんどの参加者が中途失明者。見えていた記憶のなかをさぐる。生まれた時から全盲のとしこさんは幼い日のことを思いだして、その情景を話してくれる。井野さんやわたしはあいづうちをうち、続きを促したり、質問をなげかけたりする。参加者もその会話にはいることが多い。その間、飯島は心臓の鼓動のようなギターを弾きつづける。
 
第1回目は「好きな場所について」。幼い頃、としこさんは毎日のように井戸端で座り込んでいたらしい。洗濯する音、米を研ぐ音、大人たちのおしゃべりを聞いているのが楽しかったと話してくれる。手入れのゆきとどいたサラサラの髪の鈴木君は、生まれ育った和歌山・串本の海のことを話しはじめた。まるくカーブする海岸に朝の光。太陽の粉をふりかけたような海。星空の下で夜の色で波の音だけをくりかえす海が見えるよう。彼が成長していく傍らにいつも海があったのだとわかる。
 
鈴木君は、まだ施設に入所したばかりで、進んで自分のことを話すようなことがなかったので、井野さんは少し驚いている。こうやってわたしたちは幸運な出逢いをしたけれど、彼が再びワークに参加するのは、この日から数ヶ月もたってから。二度目は友人とともに参加し、途中で茶化すように笑い出して退席した。
それから彼の姿をみないまま数ヶ月がたち、秋になったある日、井野さんから電話が入った。「鈴木君が自分の書いた詩を假奈代さんに読んでほしいと言ってるのよ」。4カ所にエンボスのついた升目に記憶している文字を書きつづったと聞く。3日後、マフラーを巻いた井野さんから分厚い封筒を受け取る。その重さは露に濡れた干し草を思わせた。

 

* 上田 假奈代 出動情報 *

 ●
詩の学校(應典院校)
3/3・17
4/7・21 すべて水曜 19:30〜 ¥1000
以降もつづきます
at 應典院 http://www.outenin.com/
大阪市天王寺区下寺町1-1-27 tel.06-6771-7641

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ぽえ茶会

 

vol.14「借り物清算会」〜こころの荷物を軽くしよう
3/12(金)
講師:上田假奈代、小崎泰嗣
19:00 open 20:00 start
前売¥1300 当日¥1500 中高生¥1000
ドリンク別

 

vol.15 野原を食べるかい
4/15(木)
料理人:上田味左子、案内人:上田假奈代
19:00 start ¥2500(要予約)
野草料理と野原のお酒つき
at cocoroom
大阪市浪速区恵美須東3-4-36
フェスティバルゲート4F tel.06-6636-1662

*
すべてのお問合せ
COCOROOM
大阪市浪速区恵美須東3-4-36フェスティバルゲート4F
tel&fax. 06-6636-1662 tel. 06-6636-1612
info@kanayo-net.com

「ぽえ犬と詩人は歩きながら考える」は、詩人が社会とどう関ることができるか、を挑戦していくレポートです。
放出・視覚障害者施設ライトハウスでの「声とことばのワークショップ」は、月に2回(土曜日)に開いています。詳細はお問合せください。
info@kanayo-net.com tel&fax06-6636-1662 ココルーム(上田)

 

上田 假奈代 (うえだかなよ)
闘う詩人・詩業家
 
3歳から詩作をはじめ、17歳から朗読開始
90年代から、さまざまなワークショップや催しをてがける
00年から「トイレ連込み朗読プロジェクト」実施
02年から、詩のワークショップ「詩の学校」をひらく
フェスティバルゲート4F「cocoroom」代表
http://www.kanayo-net.com/



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<このページはC/P カルチャーポケットに掲載されたものを転載しています>
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