たしかに耳のカタチが思いだせない
真正面にさしむかうことよりも
隣に座ることが好きだったにもかかわらず
たしかに耳のカタチが思いだせない
睫毛のうえでころころと駆け廻る
言葉たちをみてた
光のぐあいで睫毛の影は
打楽器のように伸びたり縮んだりした
それをみてるのが好きだった
12月のデルタは冷たい足指の振動
ポケットに足りない
マフラーに足りない
信号機の変わる音のする予感
もう、いくつの青をみただろう
月の影に
架かる橋の下で虫たちは群がる
明日
死骸を吸った雨が降るだろう
手の甲にのせたその雨を
心臓にかえて
隣に座るとき
耳のカタチが思いだせるだろうか
そのことを確かめる雨は不実だろうか
と 爪に挟まった土がとれないことばかり
思いだしてしまいます
それが問題です
みょんみょん言うと耳の穴がふるえました
かみさまはみみのあなにおりますから。
営業中ですか いえ 休業中でして
初老の紳士は答えて ますます
耳のカタチが思いだせない
