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假奈代のはたらきもの
せかいの せなかの ことば

 

上田假奈代のはたらきものたち

出逢いの北陸

  • ■12月1日 メロメロポッチ
    11月30日名古屋のKDハポンでのライブを終えると
    名古屋駅の上のホテルで東京から来てくれたポエトリーカレンダーの発行人と
    深夜まで打ち合わせ。翌昼、特急しらさぎ7号にのりこみ金沢に到着。

    金沢駅でココルームのスタッフ阿佐田亘くんと合流。

    は金沢近江町市場のメロメロポッチに16:00入り。
    お客様がきてくださるか、不安だったけれど
    常連客の人がそのまま残ってくれたり
    朝日新聞金沢版に情報を掲載いただいたおかげで
    さまざまな年齢層のお客さまに来場いただいた。

    前座は亘くん。
    彼の作風は緊張感にあふれている。
    見ているわたしまで、緊張してくる。

    観客は静かにその緊張に身をゆだねているのがわかる。
    ライブは上田ソロで始まった。

    金沢の観客は、もの静かでポーカーフェイス。
    楽しんでもらえていないのかしらと、声をだしながら不安になる。
    休憩時間には感想や質問をいただき、ともかく嫌われているわけじゃないと思った。

    その後、亘くんと朗読1作、オーナーの熊野さんとの朗読セッションで幕を閉じる。
    この夜には、12/3に一緒にセッションを行なう金沢在住のDJたちも来てくれて
    ライブ終了後は顔あわせ兼打ち合わせとなる。

    宿泊は金沢21世紀美術館の子供都市研究所のレジデンスにまぜてもらう。
    寒さであまり眠れない寝袋のなかでうつらうつらした。


  • ■12月2日 北陸先端科学技術大学院大学
    正午に子供都市研究所の多田さんと亘くんと3人で近江町市場へ。
    夜の「隣の晩ご飯プロジェクト」の買い出しのために橋本さんから
    送られてきたファックスを握りしめて。

    その地図には地元の人が食べる定食屋さんまで印されていて
    まづは、日替わり定食の店「たつや」で腹ごしらえ。
    そのあと3人は作戦をたて、両手いっぱいの買い出しを行なった。

    そのまま多田さんの運転で北陸先端科学技術大学院大学へ。
    わたしたち3人は大学のちいさなキッチンで料理の準備でおおわらわ。

    夕方17:00から教授と鼎談を行なう。
    大学の人たちが来てくれるのだろうかと心配していたのだけれど
    橋本さんの弟子の桑村さんのおもしろいフライヤ
    (あ の字に濁点、何と読むのでしょう、とか、あ と ぬ が1文字になっている)が
    ゲリラ的に学内のあちこちに貼ってくださっていた効果か
    会場には50人以上が詰めかけてくださった。 
    部屋に入れず、扉を開けてそこからみてくださる方も。

    鼎談は、下嶋篤氏(表現を哲学する科学者)、橋本敬(進化を味わう複雑系研究者)、わたしという異色の組み合わせ。
    おふたりとも表現への洞察が深く、話す内容も非常に多層的になり興味深いものだった。

    観客も深くうなづきながら耳を傾けてくださり、最後の質疑応答では挙手がつづいた。
    終了後、学生さんらしき人が近づいてきて
    「研究を続けるか、社会にでるか、迷っているんですが、お話を聞いて励まされました」と。
    つたない話のなかから、そんなふうにとらえてもらったことが嬉しかった。

    その後は、隣の晩ご飯プロジェクト」。
    ヤノベケンジさんとそのスタッフ、大学のメンバー総勢30人がテーブルを囲んだ「生春巻き」。
    刺身からお肉から、いろんなものをライスペーパーに包んで食べる。
    市場でみつけた黄金色のキノコでスープを作ったのは大正解だった。


  • ■12月3日 金沢21世紀美術館 子供都市研究所
    この日が一番の山場となった。
    夕方16:00からはこどもたちとカルタをつくるワークショップ。
    夜19:00からは金沢在住DJたちとライブ。

    午前中から片付けや機材の搬入やセッティングで現場緊張感の会場。
    わたしはおにぎりを口にすると、段取への集中力を高めようと深呼吸。
    今日はじめてあう仙台の詩人との打ち合わせしながら
    こどもたちは来てくれるのかしら、と心配していた。

    子供都市と美術館のスタッフが強力に協力してくださって
    ワークショップがはじまったときには
    19人のこどもたちが赤い絨毯のうえでわいわいがやがや、カルタを作ることになった。
    キモノ姿のお母さんがいた。
    フライヤのわたしの姿を見て何年ぶりかキモノを着てみようと思いついたのだとか。

    小学1年生から5年生くらいまでのこどもたちに、きものの袖をひっぱられ 
    カルタはなんとか完成。
    夜にはライブがあるのでその準備を考えるとワークショップを
    時間通りに終わらせなくてはならない。
    たくさんのスタッフたちがいろんな動きをしてくれることに助けられる。
    わたしは何度も時計を見る。
    カルタ46枚セットが完成し、威勢良く「僕が読む」と名乗りをあげる男の子がいた。
    熱気むんむん大盛り上がりをみせたカルタ大会。

    ワークショップ終了後、会場のセッティングに入る。

    ライブはヤノベケンジさんたちの作品が舞台美術になる。
    巨大なミラーボールがまわり、そうそう見られない風景だったと思う。

    ツヨシくんが長いライン(100メートルはあっただろう)を外にだし、野外の音を採取する。
    その音をコボちゃんが操作して会場に流す。(ツヨシくんは会場がどうなっているかを知らない)
    この不思議なユニットは客入れのときから、演奏(操作)をはじめていた。

    時間になり、ヤノベケンジさんのご挨拶からはじまる。
    わたしが朗読をはじめると、わたるくんがビー玉を転がしたり、ふしぎな音をだして野外の音と重なる。

    その後、声だけのセッションに。仙台の詩人・武田さんが朗読。
    次に、わたしの詩に武田さんが一行ずつ彼の詩を挿入する合作を読む。
    再び武田さんが自作詩を朗読。わたしは自作の短い詩を本日バージョンで暗唱。

    休憩をはさんで2部。
    DJとラップトップの3人との朗読セッション。
    「天体04」を朗読した。
    このエロティックな作品は、観客を(とくに男性を)吃驚させてしまうことが多いのだが
    金沢ではどうだろうか。
    観客は微動だにしないのだが、集中力は伝わってきた。
    急に、場内の温度があがった。

    「水をください」とお願いすると、おじいさんがコップを運んでくださった。
    そのとき観客から拍手が起こったりした。
    (スタッフが水を運ぼうとしたらしいのだが、客席からたちあがったおじいさんが
    「わしが持って行く」とおっしゃったのだと後から聞いた)

    彼らとわたしは、お互いの気配を読み合い、呼吸する。 
    音は波になり、その波をコントロールしながらも、天井を突き抜け
    何度も火花が散り、冬の金沢の空へと広がった。


    ライブが終了し、片付けをしていると、観客から
    「写真を撮ってください」と声がかかった。
    観客が最後まで静かだったので、すこし心配していたのでうれしく応じた。

    DJたちはこれから別のクラブで仕事だったようだ。
    「かなよさんの枠もありますよ」と言ってくれたので 
    遅い夕ご飯をすませてから、クラブへ向かった。

    途中で道に迷い、翌日の打ち合わせの電話も入ったこともあり
    到着すると、もう彼らの出番は終わっていた。
    扉の前で1時間ほど立ち話をした。

    東京に行かず、金沢で活動すること。
    その金沢に大阪からやってきたアーティストと
    強い印象をもつライブを行なったこと、その意義。
    このことを若い人たちに伝えていくこと、など。

    27:30頃まで話しただろうか、
    それからレジデンスに戻り、翌日の準備をして 
    眠りについたのは明け方だった。

  • ■12月4日 金沢市民芸術村
    赤煉瓦の建物が美しいこの建物のPIT05アート工房が会場。
    作家・土田俊介さんの作品を使ったこどもたちとのワークショップのはずだったが
    開始の14:00直前には人影もなく、どうしようかと考え込んでしまった。
    撮影してくれる方にも参加してもらおうと声をかけたほどだったのが 
    はじめようとするときになり、人が集まりはじめ 
    後半には21名の参加になった。

    こどもの参加は2人で、あとは大人たちだったが
    12/1にも来てくださった初老のご婦人や
    昨日手伝ってくれた金沢美大の学生さんの顔もあり 
    ツアーであることがありがたかった。

    ひとりのこどもが、土田さんの作品の黒板に「あ」という字を水で書き
    参加者全員がプロジェクタで写されたその字を文頭とした詩を書く。

    順に朗読をして、休憩をはさみ
    次は全員で連詩をつくる。

    こういった形式は詩のワークショップならではで
    見知らぬ人のことばとのコミュニケーションは思わぬ発見がある。

    途中で、別の工房の裏方さんだろうか、黒靴下の雪駄の方が「興味あるから」と
    連詩つくりに参加し「時間がないもんで」と一番に朗読。 
    風のように現場に向かって行かれた一幕も。

    空調の音が大きかったので
    すこし声が聞き取りにくかったのが残念だったが、ワークショップは
    なごやかに進行し終了後もさまざまな質問を受けた。

    ビデオ撮影をしてくださった橋本さんたちと
    12/1の観客・小松さんが夜勤明けにワークショップ終了後だったが来てくださった。
    せっかくだからと、亘くんを金沢駅まで送り、関係者でお茶を飲み 
    雨のふりだした金沢で回転寿司ならぬ海天寿司を食べた。
    久しぶりに、ゆっくりご飯を食べたように思う。

    この夜はレジデンスではなく、市内にホテルとった。
    「踊りに行こうぜ!」の砂蓮尾さんたちと同じホテルで
    帰りは一緒のサンダーバードで帰ろうと、という話になっていた。

    ホテルに戻ってしばらくすると
    小松さんから、会いに行ってもよいかと連絡が入る。
    金沢の若者に興味をもってもらえるのは嬉しいので、
    「地域交流ってことで」と応じて、25:30までいろいろと話をした。


  • ■12月5日 本光寺 門徒会館2階ホール
    障子の窓のむこうは、荒々しい音をたてる風と雨。

    「嵐を呼ぶ女・上田假奈代が 小松市本光寺で書家・カズさんと
    朗読セッションを行なう。12月5日13:45嵐」
    橋本さんがビデオに向かって吹き込んでいた。

    わたしが訪れた北陸での最初の4日間は驚くほど天気にめぐまれていて、
    晴れ女と言われていたのに。

    カズさんはこのお寺でさまざまなイベントをプロデユースされているそうで
    会場も既にいつでも始められるような状態まで準備してくださっていた。

    この日は法事で飛び回っていらっしゃる住職にご挨拶に伺った。
    わたしの顔を見た瞬間
    「素晴らしい人が来てくれた」とおっしゃる住職。
    本番をひかえた人間に、こんな素敵なことばを投げかけるなんて 
    すごい住職だわと舌をまく。

    檀家さんと職員さん、お坊さんに見守られてのライブは
    静かに和やかに進行する。
    カズさんは普段は文字をお書きになる書家なのだが
    朗読のことばに触発されたのか
    踊るように筆は宙を跳ね、何枚もの絵をお描きになった。

    観客にはお土産に好きな絵を持って帰ってもらおう、と
    カズさんは優しい。
    終了後に選んだ一枚を手にもっていただき、わたしがインタビューしたものを
    橋本さんのビデオにおさめてもらった。

    会場を片付け、ホールを現状復帰してから本堂にお参りさせてもらった。
    住職は「また来てくださいね。泊まるところはいっぱいあるから」と微笑む。

    たくさんのお土産を手に、お寺をあとにし
    最後に打ち上げをしようと橋本さんたちと
    小松市内の焼き肉屋に入った。

    暴風雨もすこしは小降りになり
    サンダーバードに乗り込み、砂蓮尾さんとみさこさんと
    表現と社会についてお喋りしながら、あっというまに京都に到着した。